2012年 05月 27日
ケンタウルス、露をふらせ
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昨晩、二日ぶりのオットとの夕食。またかつを。
オットはこの時期毎日かつをでもいいという。
江戸っ子かよ。
最近は土井先生の、味付けは三杯酢で、薬味たっぷりにハマっている。
さっぱりと、大変美味。
実家へ。
本棚の「銀河鉄道の夜」を久しぶりに読む。
ああ、活字拾いの仕事が現代にもあったなら・・・!
家へは帰らずジョバンニが町を三つ曲ってある大きな活版処にはいってすぐ入口の計算台に居ただぶだぶの白いシャツを着た人におじぎをしてジョバンニは靴をぬいで上りますと、突つき当りの大きな扉をあけました。中にはまだ昼なのに電燈がついてたくさんの輪転器がばたりばたりとまわり、きれで頭をしばったりラムプシェードをかけたりした人たちが、何か歌うように読んだり数えたりしながらたくさん働いて居りました。
ジョバンニはすぐ入口から三番目の高い卓子に座った人の所へ行っておじぎをしました。その人はしばらく棚をさがしてから、
「これだけ拾って行けるかね。」と云いながら、一枚の紙切れを渡しました。ジョバンニはその人の卓子の足もとから一つの小さな平たい函をとりだして向うの電燈のたくさんついた、たてかけてある壁の隅の所へしゃがみ込むと小さなピンセットでまるで粟粒ぐらいの活字を次から次と拾いはじめました。青い胸あてをした人がジョバンニのうしろを通りながら、
「よう、虫めがね君、お早う。」と云いますと、近くの四五人の人たちが声もたてずこっちも向かずに冷くわらいました。
ジョバンニは何べんも眼を拭いながら活字をだんだんひろいました。
六時がうってしばらくたったころ、ジョバンニは拾った活字をいっぱいに入れた平たい箱をもういちど手にもった紙きれと引き合せてから、さっきの卓子の人へ持って来ました。その人は黙ってそれを受け取って微かにうなずきました。
ジョバンニはおじぎをすると扉をあけてさっきの計算台のところに来ました。するとさっきの白服を着た人がやっぱりだまって小さな銀貨を一つジョバンニに渡しました。ジョバンニは俄に顔いろがよくなって威勢よくおじぎをすると台の下に置いた鞄をもっておもてへ飛びだしました。それから元気よく口笛を吹きながらパン屋へ寄ってパンの塊を一つと角砂糖を一袋買いますと一目散に走りだしました。
なんという美しい文章。
しらしらと、夢の中からでも香りだしたというように咲き、どかどかするからだ。
そのまっ黒な、松や楢の林を越こえると、俄にがらんと空がひらけて、天の川がわがしらしらと南から北へ亘っているのが見え、また頂の、天気輪の柱も見わけられたのでした。つりがねそうか野ぎくかの花が、そこらいちめんに、夢の中からでも薫りだしたというように咲き、鳥が一疋、丘の上を鳴き続けながら通って行きました。
ジョバンニは、頂の天気輪の柱の下に来て、どかどかするからだを、つめたい草に投げました。
読み返したのはこれだけど、「フランドル農学校の豚」がとにかくすごい。
「或る農学生の日誌」も、ものすごく地味だが日記好きには興味深かった。
by kumanekoy
| 2012-05-27 10:33
| 読書
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Comments(2)
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by
wasuregusa
at 2012-05-30 13:37
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奇遇です。
わたしも みなさんがコンビニで日食グラスを用意される頃、
本棚からやおら「銀河鉄道…」を取り出しておりました。
うちにあったのは、子どもに買い与えた偕成社青い鳥文庫。
子どもは苦手だと言いました。
何か 下へ下へ引き込まれるようだと。
わたしも子どもの頃、賢治が苦手でした。
理由は同じ。下へ下へ引き込まれるようで。
それが今、しみじみといいんです。
音楽でいえばアルトの旋律、
テンポはそう、アンダンテ…いやむしろこれはラルゴ。
活字拾い…
六時がうつ…
しらしら と どかどか の間で
いっそ暮らしてみたいな と思ったりします。
わたしも みなさんがコンビニで日食グラスを用意される頃、
本棚からやおら「銀河鉄道…」を取り出しておりました。
うちにあったのは、子どもに買い与えた偕成社青い鳥文庫。
子どもは苦手だと言いました。
何か 下へ下へ引き込まれるようだと。
わたしも子どもの頃、賢治が苦手でした。
理由は同じ。下へ下へ引き込まれるようで。
それが今、しみじみといいんです。
音楽でいえばアルトの旋律、
テンポはそう、アンダンテ…いやむしろこれはラルゴ。
活字拾い…
六時がうつ…
しらしら と どかどか の間で
いっそ暮らしてみたいな と思ったりします。
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by
kumanekoy at 2012-06-05 00:26
wasuregusaさん、再びこんばんは☆
まあ!なんと奇遇な!!
「下へ下へ引き込まれるよう」、なるほど。
それにしても感性の鋭いお子さんですね。
私は小さいころ、どうだったのかな?
銀河鉄道は結構遅く、小学校高学年くらいに初めて読んだ気がするのですが、活字拾いの印象しかなかった気がします(笑)
やはり大人になってからのほうが数段いいです。
ラルゴですか。そうですね。
あ、私も「六時がうつ」も好きです。
wasuregusaさんの、いっそ暮らしてみたいって素敵な言葉だな。
しらしらとどかどかの間は、すごくゆっくりです、きっと。
まあ!なんと奇遇な!!
「下へ下へ引き込まれるよう」、なるほど。
それにしても感性の鋭いお子さんですね。
私は小さいころ、どうだったのかな?
銀河鉄道は結構遅く、小学校高学年くらいに初めて読んだ気がするのですが、活字拾いの印象しかなかった気がします(笑)
やはり大人になってからのほうが数段いいです。
ラルゴですか。そうですね。
あ、私も「六時がうつ」も好きです。
wasuregusaさんの、いっそ暮らしてみたいって素敵な言葉だな。
しらしらとどかどかの間は、すごくゆっくりです、きっと。